最低賃金が10月1日から順次引き上げ(全国平均1,177円・+56円)。「月給制だから大丈夫」のままにしない、美容室が発効日までに確認すべき4つのこと

令和8年度の地域別最低賃金は全国加重平均1,177円(+56円)に決まり、10月1日から12月2日にかけて都道府県ごとに発効します。月給制のアシスタントや受付スタッフも時給に換算して確認が必要です。美容室が発効日までにやるべき4つのことを、厚生労働省の発表をもとに整理します。
「うちは月給制だから、最低賃金は関係ない」——そう考えている美容室のオーナー様は少なくありません。ところが、アシスタントや受付スタッフの月給を時給に換算すると、新しい最低賃金を下回ってしまうケースがあります。
先に結論をお伝えします。厚生労働省の発表によると、令和8年度の地域別最低賃金は全国加重平均1,177円(前年度から+56円)に決まり、10月1日から12月2日にかけて都道府県ごとに順次発効します。美容室が今週やるべきことは、「自店の発効日を確認し、月給制のスタッフも含めて時給換算でチェックすること」です。
こんな悩みはありませんか?
- アシスタントは月給制なので、最低賃金の改定を気にしたことがない
- 営業後の練習時間を、どう扱えばいいか決めきれていない
- 人件費が上がるのは分かるが、価格に反映するか迷っている
この記事で分かること
- 令和8年度の最低賃金で「何が決まったか」(公式発表の事実)
- 月給制スタッフを最低賃金と比べる計算方法
- 発効日までに美容室がやるべき4つのこと
何が決まったのか(厚生労働省の発表)
厚生労働省は9月、全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されたと発表しました。主な内容は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 全国加重平均 | 1,177円(前年度1,121円) |
| 引上げ額 | 56円(目安制度が始まった昭和53年度以降で2番目の大きさ) |
| 都道府県ごとの引上げ額 | 54円〜65円 |
| 発効日 | 10月1日〜12月2日にかけて順次(予定) |
都道府県ごとの金額と発効予定日の例です(答申状況の資料より)。
| 都道府県 | 改定後の金額 | 発効予定日 |
|---|---|---|
| 東京都 | 1,280円 | 10月1日 |
| 大阪府 | 1,231円 | 10月1日 |
| 愛知県 | 1,195円 | 10月1日 |
| 新潟県 | 1,108円 | 10月1日 |
| 石川県 | 1,113円 | 10月3日 |
| 福島県 | 1,094円 | 10月16日 |
| 京都府 | 1,180円 | 11月16日 |
発効日は都道府県によって大きく違います。「10月から」と思い込まず、自店の所在地の日付を確認することが最初の一歩です。
よくある誤解:「月給制なら最低賃金は関係ない」
最低賃金は、パート・アルバイトだけでなく月給制の正社員にも適用されます。厚生労働省は、月給制の場合の確認方法として次の式を示しています。
月給 ÷ 1箇月平均所定労働時間 ≧ 最低賃金額(時間額)
このとき、通勤手当・時間外手当・精皆勤手当・家族手当・深夜割増賃金などは、月給から除いて計算します。
たとえば東京都で、アシスタントの基本給が月20万円、1ヶ月平均の所定労働時間が170時間の場合、
- 200,000円 ÷ 170時間 = 約1,176円
となり、10月1日からの東京都の1,280円を下回ります(計算例であり、実際の判定は手当の内訳や所定労働時間で変わります)。「求人票では問題なかった月給」でも、改定のたびに下回る可能性がある、ということです。
Point
月給制でも最低賃金は適用されます。「月給÷月の所定労働時間」で時給に直し、発効日の前に全スタッフを確認しましょう。
美容室が発効日までにやるべき4つのこと
1. 自店の発効日と新しい金額を確認する
厚生労働省の「地域別最低賃金の全国一覧」で、店舗の所在地の金額と発効日を確認します。複数店舗を別の都道府県で運営している場合は、店舗ごとに確認が必要です。発効日は予定で、変更の可能性があると注記されています。
2. 全スタッフを「時給換算」でチェックする
次の表をコピーして、スタッフごとに埋めてみてください。
| 確認項目 | 記入例 |
|---|---|
| 雇用形態 | 月給制/時給制 |
| 基本給+算入する手当(月額) | 200,000円 |
| 除く手当 | 通勤手当・時間外手当・精皆勤手当・家族手当 |
| 1ヶ月平均の所定労働時間 | 170時間 |
| 時給換算額 | 約1,176円 |
| 新しい最低賃金 | 1,280円(東京都) |
| 判定 | 下回る → 改定が必要 |
見落としやすいのは、入社1年目のアシスタント・受付スタッフ・時短勤務のスタッフです。歩合給がある場合の計算は別のルールになるため、社会保険労務士に確認すると確実です。
3. 練習・朝礼・片付けの時間の扱いを決める
最低賃金の判定は「何時間働いたか」と切り離せません。店が参加を指示している練習や研修、開店前の朝礼、閉店後の片付けは、労働時間にあたる可能性が高いと考えられます。
自由参加の練習なのか、実質的に義務なのかで判断が分かれます。この機会に、
- 練習は「自由参加」か「業務」かを明文化する
- 業務とする場合は、時間を記録して給与に反映する
の2点をスタッフと共有しておくと、あとからのトラブルを防げます。人が辞めない店づくりの観点では、離職に歯止めをかけたエステサロンの運営改善も参考になります。
4. 人件費の増加分を「価格・メニュー」で試算する
人件費がどれだけ増えるかを、まず概算で出しておきます。
- 試算例:時給が56円上がるスタッフが月160時間働く場合、1人あたり月約9,000円(56円×160時間=8,960円)
- 対象スタッフが5人なら、月約4.5万円・年約54万円
この増加分を、値上げで吸収するのか、メニュー構成(トリートメントなどの追加提案)で吸収するのかを決めておきます。ホットペッパービューティーの調査では、ヘアサロン利用者の51.0%が値上げを経験し、73.3%が納得していると報告されています。詳しくは値上げの受け止め方をまとめた記事をご覧ください。
価格を変える場合は、クーポン・メニュー表・Googleビジネスプロフィールの価格表示をまとめて更新し、掲載先ごとに金額がずれないようにしておくことが大切です。
事実と見立てを分けて整理します
- 事実:全国加重平均1,177円(+56円)、10月1日〜12月2日に順次発効(厚生労働省発表)
- 事実:月給制も「月給÷1箇月平均所定労働時間」で最低賃金と比較する(厚生労働省)
- 見立て:スタッフの時給を上げる店が増えると、アシスタント採用の条件比較がより厳しくなる可能性があります
- 見立て:人件費を価格に反映する美容室が増え、お客様が価格を比べる機会は増えると見込まれます
まとめ
- 最低賃金は全国平均1,177円(+56円)。発効日は10月1日〜12月2日で都道府県ごとに違う
- 月給制のアシスタント・受付スタッフも、時給に換算して確認が必要
- 練習・朝礼・片付けの時間の扱いを、この機会に明文化する
- 人件費の増加分を試算し、価格かメニューで吸収する方針を決める
- 価格を変えるなら、ホットペッパー・Googleなど掲載先をまとめて更新する
次に読む記事:ヘアサロン利用者の51.0%が値上げを経験。来店頻度が減る時代に美容室がやるべきこと/まとめガイド:ホットペッパービューティー運用ガイド
※本記事は一般的な情報の整理です。個別の給与設計や労働時間の判断は、社会保険労務士や最寄りの労働基準監督署にご確認ください。
参考: - 全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました(厚生労働省) - 令和8年度 地域別最低賃金 答申状況(厚生労働省・PDF) - 最低賃金額以上かどうかを確認する方法(厚生労働省)
よくあるご質問
月給制のアシスタントも最低賃金の対象になりますか?
対象になります。厚生労働省は、月給制の場合は「月給÷1箇月平均所定労働時間」で時間あたりの金額を出し、地域別最低賃金額以上かどうかを確認する方法を示しています。通勤手当・時間外手当・精皆勤手当・家族手当などは計算から除きます。
自分の店の都道府県はいつから新しい金額になりますか?
令和8年度の改定は、10月1日から12月2日にかけて都道府県ごとに順次発効する予定です。たとえば東京都・大阪府・愛知県・新潟県は10月1日、石川県は10月3日、福島県は10月16日、京都府は11月16日と答申されています。発効日は予定のため、最新の情報は厚生労働省の一覧で確認してください。
営業後の練習時間も労働時間に入りますか?
店が参加を指示している、または参加しないと不利益がある練習・研修は、労働時間にあたる可能性が高いと考えられます。自由参加かどうかの実態で判断が分かれるため、個別のケースは社会保険労務士や労働基準監督署に確認することをおすすめします。