カスハラ対策が10月1日から事業主の義務に。「うちは小さい店だから」のままにしない、美容室が今週やるべき4つのこと【スタッフ周知文テンプレ付き】

改正労働施策総合推進法により、2026年10月1日からカスタマーハラスメント対策が事業主の義務になります。方針の明確化・相談窓口・事後対応など、厚生労働省の指針が示す措置を、美容室の現場に置き換えて整理。今週やるべき4つのことと、そのまま使えるスタッフ向け周知文を紹介します。
「うちは数人の小さな店だから、ハラスメント対策の義務は関係ない」——そう考えている美容室のオーナー様もいらっしゃるかもしれません。ですが、明日から状況が変わります。
先に結論をお伝えします。改正労働施策総合推進法により、2026年10月1日から、カスタマーハラスメント(カスハラ)対策が事業主の義務になります。厚生労働省の資料では、方針の明確化・相談窓口・事後対応など10項目の措置が示され、「事業主は必ず講じなければならない」とされています。美容室が今週やるべきことは、「スタッフを守る方針を文章にし、誰に相談すればいいかを決め、一人で対応させない手順を共有すること」です。
こんな悩みはありませんか?
- 施術後に何度もやり直しや返金を求められ、担当スタッフが疲れ切っている
- 閉店後も居座るお客様や、長時間の電話にどう対応すべきか決まっていない
- 「お客様だから我慢して」と言ってしまい、スタッフが辞めないか心配
この記事で分かること
- 10月1日から義務になる措置の中身(厚生労働省の資料より)
- 正当なクレームとカスハラの線引き
- 美容室が今週やるべき4つのことと、スタッフ向け周知文のテンプレ
何が変わったのか:10月1日からカスハラ対策が「義務」になる
厚生労働省の資料によると、職場におけるカスハラとは、次の3つの要素をすべて満たすものです。
- 顧客等の言動であること
- 業務の性質などに照らして、社会通念上許容される範囲を超えていること
- 働く人の就業環境が害されること
また、電話やSNSなどインターネット上の言動も含まれると明記されています。「顧客等」には、今後サービスを利用する可能性がある人も含まれます。
事業主が講じる措置は、大きく次のように整理されています。
| 区分 | 主な内容 |
|---|---|
| 方針の明確化と周知 | カスハラには毅然と対応し、働く人を守る方針を明確にして周知する。対処の内容(一人で対応させない、警察への通報など)を周知する |
| 相談体制の整備 | 相談窓口をあらかじめ決めて周知し、担当者が適切に対応できるようにする |
| 事後の対応 | 事実関係を確認し、被害者に配慮し、再発防止に取り組む |
| 抑止のための措置 | 特に悪質なカスハラへの対処方針を決めておき、対処できる体制を整える |
| あわせて講じる措置 | 相談者のプライバシーを守る。相談したことを理由に不利益に扱わないと定めて周知する |
あわせて10月1日からは、求職者等へのセクシュアルハラスメント対策も義務になります。サロン見学や面接、SNSのDMでの採用のやり取りも対象になり得るため、採用活動をしている美容室は注意が必要です。
よくある誤解:「カスハラ対策=お客様を疑うこと」ではない
「対策を打つと、お客様を悪者扱いしているようで気が引ける」という声は、支援の現場でもよく聞きます。ですが、厚生労働省の定義は「行き過ぎた言動」だけを対象にしています。
- 仕上がりへの正当な不満や、やり直しの依頼 → カスハラではありません
- 理由のない返金要求、暴言、土下座の強要、閉店後の居座り → カスハラにあたる可能性があります
厚生労働省の資料でも、対策を講じる際は消費者の権利や障害者差別解消法(不当な差別的取扱いの禁止・合理的配慮の提供)に留意するよう求められています。つまり、線引きを決めることは、正当な声には今まで以上に丁寧に応え、行き過ぎたものからはスタッフを守るためのものです。
Point
カスハラ対策は、お客様を疑う仕組みではなく「正当な声に丁寧に応え、行き過ぎからスタッフを守る」ための線引きです。
美容室への影響:方針・窓口・手順の3つが問われる
方針:オーナーの「我慢して」が一番のリスクになる
美容室は、1人のスタッフが長時間お客様と向き合う仕事です。施術中は席を離れにくく、担当者が一人で抱え込みやすい構造があります。
オーナーが「お客様だから我慢して」と伝えてしまうと、方針の明確化という義務と逆の状態になってしまいます。まずは「行き過ぎた言動からはスタッフを守る」と言葉にして伝えることが出発点です。
窓口:小さな店ほど「誰に言えばいいか」を決めておく
相談窓口といっても、大がかりな部署は不要です。少人数のサロンなら、「オーナー」と「オーナーがいないときの店長」の2人を窓口に決め、スタッフ全員に伝えておくだけでも形になります。
大事なのは、相談したことを理由に不利益に扱わないと明言することです。これも措置の一つとして示されています。
手順:「一人で対応させない」をサロンの動きに落とす
厚生労働省の資料では、あらかじめ定める対処の例として「管理監督者に指示を仰ぐ」「可能な限り一人で対応させない」「犯罪に該当し得る言動は警察へ通報する」などが挙げられています。
美容室なら、たとえば次のように置き換えられます。
- 同じ要求が2回続いたら、担当者から店長・オーナーに交代する
- 閉店時刻を過ぎた居座りは、2人以上で対応する
- 電話は日時・内容を記録し、長時間になる場合は折り返しにする
- SNSや口コミで脅迫・名誉を傷つける書き込みがあれば、スタッフは返信せずオーナーに報告する
口コミについては、事実に基づく低評価まで削除や反論の対象にするのは避けましょう。返信の考え方は低評価の口コミへの返信例文でまとめています。
今週やること:美容室が10月中に整える4つのこと
- 方針を1枚の文章にする(下のテンプレを使って、スタッフに共有)
- 相談窓口を決める(オーナー+店長など2人。LINEグループとは別に、個別に相談できる形に)
- 対処の手順を決める(交代のタイミング、2人対応、記録の取り方、警察への通報の基準)
- 採用のルールを決める(サロン見学・面接の場所と時間、DMでやり取りする担当者を決める)
そのまま使える:スタッフ向け周知文テンプレ
【当店のカスタマーハラスメントへの対応方針】 当店は、お客様からのご意見・ご要望に誠実に対応します。一方で、暴言、脅迫、理由のない返金や過度な要求、長時間の居座りなど、社会通念上許容される範囲を超える言動に対しては、スタッフを守るため、店として毅然と対応します。 ・困ったときは一人で抱えず、[オーナー名]または[店長名]に相談してください ・同じ要求が続く場合や身の危険を感じる場合は、すぐに交代・複数対応に切り替えます ・相談したことで不利益に扱うことは一切ありません。相談内容の秘密は守ります
雇用の実務では、10月から最低賃金の改定も重なります。あわせて最低賃金の引き上げで美容室が確認すべきことも確認しておくと安心です。
事実と見立てを分けて整理します
- 事実:2026年10月1日から、カスハラ対策(雇用管理上の措置)が事業主の義務になる(厚生労働省)
- 事実:電話・SNSなどインターネット上の言動も含まれる(厚生労働省)
- 事実:同日から、求職者等へのセクハラ対策も義務になる(厚生労働省)
- 見立て:「スタッフを守る店かどうか」は、今後の採用で求職者が店を比べる材料になっていく可能性があります
- 見立て:方針を店内掲示やWebで示す美容室が増えると見込まれます。掲示する場合は、お客様を責める言い方にならないよう注意が必要です
まとめ
- 10月1日から、カスハラ対策は規模にかかわらず事業主の義務に
- 対象は「行き過ぎた言動」だけ。正当なクレームには今まで以上に丁寧に
- 方針・相談窓口・一人で対応させない手順の3つを今週決める
- SNS・口コミ・電話も対象。スタッフは抱え込まず報告する流れに
- 採用のサロン見学・面接・DMのルールも同時に整える
次に読む記事:集客を増やしても売上が伸びないのは「人が辞める」から/まとめガイド:ホットペッパービューティー運用ガイド
※本記事は一般的な情報の整理です。個別の対応や就業規則の見直しは、社会保険労務士や最寄りの都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)にご確認ください。
参考: - 令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます!(厚生労働省・PDF) - 職場におけるハラスメントの防止のために(厚生労働省) - 従業員を守るために ― カスタマーハラスメント対策(厚生労働省 Webマガジン)
よくあるご質問
スタッフが数人の小さな美容室も対象になりますか?
厚生労働省の資料では、カスタマーハラスメント防止の措置は「事業主は必ず講じなければならない」とされ、店の規模による区別は示されていません。スタッフを雇っている美容室であれば、人数が少なくても方針の明確化や相談窓口の設置などを準備しておくことをおすすめします。
施術へのクレームや、やり直しの依頼もカスハラになりますか?
正当なクレームややり直しの依頼は、カスハラにはあたりません。厚生労働省は、①顧客等の言動で、②社会通念上許容される範囲を超え、③働く人の就業環境が害されるもの、の3つをすべて満たすものをカスハラとしています。理由のない要求や、暴言・長時間の居座りなど、内容や手段が行き過ぎたものが対象です。
SNSや口コミでの書き込みも対象ですか?
厚生労働省の資料では、電話やSNSなどインターネット上で行われる言動も含まれるとされています。ただし、低評価の口コミがすべてカスハラになるわけではありません。事実に基づく感想には丁寧に返信し、脅迫や名誉を傷つける内容など行き過ぎたものは、あらかじめ決めた手順で本部やオーナーに報告する形が現実的です。